教育文化経営学院

吉濱ツトム『アスペルガーとして楽しく生きる』『隠れアスペルガーという才能』を読む。

吉濱ツトム『アスペルガーとして楽しく生きる』『隠れアスペルガーという才能』を読む。

吉濱ツトム『アスペルガーとして楽しく生きる』

アスペルガー症候群の感じ方と生きづらさ

吉濱ツトムさんは発達障害の当事者で、発達障害カウンセラーとして発達障害を専門にカウンセリングの仕事もされています。当事者の目線で書かれた記録を読むと、本当に発達障害の方、お一人おひとり、感じ方が違うということがよくわかり、勉強になります。今回は吉濱さんのこの2冊をご紹介したいと思います。

吉濱さんは、アスペルガー症候群と診断されています。アスペルガー症候群の方がどのように世界を感じているのか、以下の部分を読むとイメージしやすいと思います。

「自分の中に絶対のルールがあります。」

「同じ道をいつもと寸分の狂いもなく進まないと、どうにもこうにも気がすみません。」

「強い自閉症の場合、違う道を行くというだけで、崖から飛び降りなければいけないような絶体絶命の精神状態に追い詰められます。」

「赤信号でも、かまわず進む。“信号のおばさん”に危ないと制止されようものなら、もう途端にパニックです。体が小刻みに上下に揺れはじめ、だんだん揺れが大きくなり、ついには泣き叫んでしまいます。」[吉濱 2015: 15]

「パニックがおさまっても、その場で膝をかかえていつまでも座り込んでいる始末。」[吉濱 2015: 16] 

違う道を行くというだけでパニックになるということに驚きです。予定外のことが起こると対応できないということが重なると、本当に日々、生きづらいのではないかと思います。 

アスペルガー症候群の方の感情の起伏が大きいということは、私も日々、知人と関わっていて感じています。「過剰な自信と過剰な劣等感の間を行ったり来たりする」[吉濱 2015: 71]と吉濱さんは書かれています。私の知人は「過剰な自信」を感じさせることは無いのですが、「過剰な劣等感」は強く出ているように思います。その落ち込みを見ていて、本当に心配になります。

 

高い知性と、周囲とのギャップ

アスペルガー症候群の方の中には、知的レベルの高い方も多くいらっしゃいます。けれども、その知的レベルとは一見、そぐわないような苦手さを抱えていることも少なくありません。

「隠れアスペルガー人は、既存のアイデアをもとに正確なコピーをつくり出すことは得意ですが、物事をゼロから創り出すことは苦手です。実際、他の人が企画書を10ページ書く間に、Aさんは3行しか書けない。」[吉濱 2016: 15] 

受験勉強はかなり得意でも、企画書のような、枠を自分で作っていくことが苦手なアスペルガー症候群の方、私も出会ってきました。問題を解くことは得意なのですが、自由研究のような宿題、実験や見学のまとめを書くことが苦手なんです。本当に何もできない、と本人は言っていました。 

けれども、知的なレベルが高いので、周囲の人たちはそれを理解できないようです。さぼっている、ふざけている、と誤解してしまうこともあるようです。本人には本当に辛いことだと思います。

アスペルガー症候群の性格特性と知的な特徴

アスペルガー症候群の方に多い性格特性を吉濱さんはいくつかあげています。私が印象に残ったのは、「優しい」「『人を守りたい』という気持ちが強い」「ネガティブな感情への共感性が高い」です。この3つは私の知人にも重なります。本当に優しい人ですから。

「優しい」

「基本的には優しいにもほどがあるというくらい優しい気質をもっています」

「繊細で傷つきやすく、『人から優しく接してほしい』と切に願っています。なので、自分が人に接するとき、無意識にそれを投影して優しくなる」[吉濱 2016: 106]

「『人を守りたい』という気持ちが強い」[吉濱 2016: 106]

「隠れアスペの場合は、むしろ『人を守りたい』『人の世話をしたい』という欲求を強くもっています。そのため、教育者、医療関係者、介護職、児童福祉施設の職員、カウンセラー、セラピストといった仕事に熱意を見せます。
なぜ『人を守りたい』と思うのか。」「使命感が強く、真面目だから」[吉濱 2016: 107]

「ネガティブな感情への共感性が高い」

「肯定的な感情は乏しい傾向にありますが、不安、恐怖、怒り、悲しみといったネガティブな感情に関しては、人一倍強い感受性をもっています。
自分がネガティブな感情に支配されやすく、落ち込みやすいので、他人が悲しみや不安の中にいるときは、強く共感することができます。悲しい気分のときに、同じように悲しんでくれる人。」[吉濱 2016: 111] 

自分自身が優しくしてほしい、ネガティブな感情に支配されやすい、ということの投影のようですが。本当に優しくて他者を大切にする人たちだと思います。

知的な面からみたアスペルガー症候群の方の特徴としては、以下のものがあげられていました。

「IQが高い」

「統計によると、真性アスペはIQ140以上という天才が多く、隠れアスペでもIQ120前後の秀才が多くいます」[吉濱 2016: 117] 

「論理的に体系化することが得意」[吉濱 2016: 121]

「アスペルガー人は、ゼロから物事を発想することは苦手ですが、既存の情報やアイデアを集めて論理的に分析し、体系的に整理することは得意」[吉濱 2016: 122] 

「すさまじい意志力がある」[吉濱 2016: 124]

「やる気がないときは何もしませんが、いったんスイッチが入ると猛烈なパワーを発揮し、寝る間も惜しんで延々と物事に取り組みます。アスペは本当に極端で、ニートか病的なワーカホリック(仕事中毒)か、どちらかになることが多い」

「このすさまじい意志力の根底には、『絶対にしなければならない』という根拠のない強迫観念があります。」[吉濱 2016: 124] 

この3つも私の知人に重なります。IQが高く、すさまじい意志力がある、本当にそのとおりだと思います。

身体面から発達障害を捉える

吉濱さんは、身体の面からアスペルガー症候群の改善の努力をされています。基礎代謝、運動に注目されている点、とても重要だと思います。

「発達障害は、この基礎代謝、糖代謝に深刻な異常が生じることが引き金となって発症します。代謝に異常が生じると、脳の気質障害にスイッチが入って、アスペルガー特有の症状が出るというわけです。」[吉濱 2015: 42-43]

「肉体が不安定になれば、意識や感情も不安定になります。」

「運動がいかに脳や情緒面にプラスに働いているかという論文が多く出されました。」[吉濱 2015: 101]

「積極的になりたいと思ったら、とりあえず二日に一回、三十分間ランニングをすればいい。それで効果があるわけですから、自分のトラウマを探し出して見つめることに比べたら、はるかに分かりやすいのです。」[吉濱 2015: 102]

吉濱さんも書かれているように、運動と脳、情緒面の関りを強調するものが多く出版されています。また、身体を作っている食事・栄養素が、直接アスペルガー症候群と関わっていることを示しているものもあります。

発達障害を、心理面からだけでなく、身体面から捉えていくことが重要ではないでしょうか。食事と運動は本当に大切だと思います。

文献

吉濱ツトム、2015『アスペルガーとして楽しく生きる――発達障害はよくなります!』風雲社

吉濱ツトム、2016『隠れアスペルガーという才能』KKベストセラーズ