教育文化経営学院

「生き物としての人間の土台」・子どものからだ:正木健雄、1995『おかしいぞ子どものからだ』

「生き物としての人間の土台」・子どものからだ:正木健雄、1995『おかしいぞ子どものからだ』

正木健雄『おかしいぞ子どものからだ』

学生さんたちと、正木健雄さんの『おかしいぞ子どものからだ』(大月書店、1995年)を読みました。この本自体は古いものですが、ここで指摘されていることは、現代に通じるものがあるように思います。

現代の子どもたちが直面する「運動機能」と「自律神経」の危機

日本の子どもたちのからだは、現在、相当に深刻な状態にあると言わざるを得ません。体格は良くなっている一方で、柔軟性が失われて骨折しやすくなっていたり、行動体力は高まっていても防衛体力が低下して自律神経のトラブルが生じやすくなっていたりといった点が指摘されています。

前者については、子どもたちがいわゆる「ロコモティブシンドローム」のような状態に陥っているということです。しかも、運動部に所属する子どもたちであっても、そのような問題を抱えている割合が高まっています。

後者の自律神経に関する問題も深刻です。一日に2度以上体温が変動する、血圧の調整ができない、汗をかかない(結果として熱中症になりやすくなる)等、多くの問題が見られます。さらに、「前頭葉が育っていない」という実験結果の紹介もありました。

学力云々の前に――「生き物としての土台」が揺らぐ現実

こうした指摘に触れていると、今の子どもたちは、学力云々の以前に、「生き物としての人間の土台」の段階で危険な状態にあるということがわかります。

例えば、体温調節ができずに身体の不快な状態が常態化していたり、前頭葉の発達未熟によって衝動性が高く自分の感情を抑えることが難しくなっていたりします。学級崩壊をはじめとする子どもの問題は、実は本人の「自覚」や態度の問題ではなく、身体的な変調に起因しているのかもしれません。常に微熱があるような不快な状態が続いていれば、授業に集中することは誰であっても難しいはずですよね。

これは現代の「多くの日本人」の問題ではないか

本書の刊行は1995年であり、対象となったのは1980年前後生まれの子どもたちです。そうであるならば、こうした健康をめぐる身体の危機は、当時を子どもとして過ごした世代を含め、すでに現代の多くの日本人が抱えている構造的な問題なのではないでしょうか。

多くの日本人が、体調不良が常態化した中で生きているということ、このことと「キレる」「幼児化」「成熟拒否社会」等々の関連について考えさせられました。