かなしろにゃんこ。『発達障害 僕にはイラつく理由(ワケ)がある!』

私たちの学院で関わっている方々の中にも、発達障害を自認されている方がいらっしゃいます。日々対話を重ねる中で、私たちが「なぜ?」と不思議に思ったり、接し方に悩んだりする場面に出会うことは少なくありません。
そんなとき、本書『発達障害 僕にはイラつく理由(ワケ)がある!』は、大きな気づきを与えてくれました。
当事者の内面に触れる貴重な言葉
本書は、漫画家のかなしろにゃんこ。さんが、発達障害と診断された成人した息子さんへの聞き取りを通して、その子ども時代を振り返った作品です。息子さんが当時どのような思いで過ごし、なぜそのような行動をとったのか。成人した本人の言葉で綴られています。
いくつか、本書に収められた言葉を紹介します。
「見ればわかるだろって質問をしてくるからイヤなんだ」[かなしろ2019:28]
「たいした用じゃないなら話しかけてくるな」[かなしろ2019:29]
「何度も聞き返されると責められてる気がしてくるから」[かなしろ2019:30]
「ボクは思い出すのに時間がかかるんだ 焦ると余計にこんがらがっちゃうよ」[かなしろ2019:31]
「『もう一回言って』って言ったら怒られるかな? 教えてくれたとしてもまた忘れちゃったらどうしようという恐怖があって」[かなしろ2019:31]
私たちが日常的に行うコミュニケーションや言葉の綾。しかし、当事者の方にとっては、それが時に強い苦痛となっていることが分かります。特に「責められてる気がする」「思い出すのに時間がかかる」という内面的な声は、私自身の関わり方を深く見つめ直すきっかけとなりました。「もういい」と沈黙してしまう背景には、こうした深い恐怖や混乱があったのです。
「見えないもの」への感覚と切り替えの難しさ
本書では「感覚過敏」についても詳しく触れられています。
「台風が近づいている時期」「満月の夜」「両親がケンカした日」「湿度や温度が高い日」「感覚刺激の多い場所(雑踏、音が響く場所、蛍光灯がまぶしい部屋、壁に掲示物が多数貼られている場所など)」では「特に聞きわけが悪くなる」「集中できない」「イライラする」ということが起こります。[かなしろ2019:87]
また、「目に見えないものは『ない』のと同じ」という特性により、物の管理が難しくなったり、気持ちの切り替えに非常に時間がかかったりと、彼ら独自の困難さが具体的に描かれています。
「イライラするときはしばらくほっといてほしいんだ イヤな気分をリセットするのにすごく時間がかかるんだよ」[かなしろ2019:116]
この言葉に触れたとき、私たちが接し方に悩んでいたことの答えは、実はシンプルに「そっとしておくこと」にあったのかもしれないと学びました。
学びの入り口として
定型発達の人に多様な個性があるように、発達障害の方にも一人ひとり異なる個性があります。そのため、本書に書かれていることがすべてに当てはまるわけではありません。
しかし、当事者の切実な思いが具体的に記された本書は、発達障害の方と関わる上で非常に重要なヒントを私たちに与えてくれます。漫画形式で読みやすく、これから発達障害について学び始めたいと考えている方にも、自信を持っておすすめしたい一冊です。
引用・参考文献
かなしろにゃんこ。、前川あさ美監修・解説、2019『発達障害 僕にはイラつく理由(ワケ)がある!』こころライブラリー、講談社