洗っても落ちない農薬の真実:『知らずに食べていませんか? ネオニコチノイド』を読んで

ネオニコチノイド系農薬について耳にすることが多くなりました。他の農薬と何が違うのでしょうか。入門書を読んでみました。
洗っても落とせない「ネオニコチノイド」の特徴
ネオニコチノイド系農薬は1992年に農薬登録されてから、使用量が増加し続けています。
水田の畔から水溶性のパック入りの除草剤をポイッと投げ入れるだけで、水田全体に薬剤が広がる手間いらずの「ジャンボ剤」が人気です。[水野編2018:26]
こんなに簡単に除草ができるんですね。この便利さから使用量が増加しているのだと思われます。では、ネオニコチノイド系農薬は、他の農薬とは何が違うのでしょうか。本書では、以下のように説明されています。
ネオニコチノイドは植物の内部に浸透し、洗っても落とすことはできません。ミツバチでは、ネオニコチノイドに直接触れるより、蜜、花粉、水などに含まれるネオニコチノイドを口から摂取する方が、毒性が10倍以上強くなることが明らかになっています。[水野編2018:22]
「洗っても落とすことができ」ない農薬ということがネオニコチノイド系農薬の特徴です。根から吸収された農薬が農作物全体に浸透していき、虫を殺しているそうです。
虫の数の管理は実際には不可能です。けれどもミツバチは養蜂されていることから、ある程度、数の増減を知ることができるそうです。そこから数の減少がわかります。また、近年、ミツバチの大量死があちこちで見つかっているそうです。
ミツバチは蜜や花粉に浸透しているネオニコチノイドを口から摂取していることから、毒性が高まっていることが推測されます。けれども、ミツバチの死因はそれだけではありません。「葉からしみ出てくる露滴を飲んで死んだミツバチ」[水野編2018:22]という記載が本書にはありました。「葉からしみ出てくる露滴」が死因になっているそうです。
人体への影響と、発達障害・神経難病のリスク
こういった作用について、メーカーは、虫には害を及ぼすけれども人間には無害だとしています。しかし本書では、人間には無関係とは言えないと主張しています。「神経を狂わせるネオニコチノイド」として、以下のような説明があります。
有機リン系農薬はアセチルコリンの分解酵素を阻害するので、神経伝達のスイッチがオンになりっぱなし。サリンなど有毒な神経ガスと同じ作用。
ネオニコチノイドはアセチルコリンの受容体に結合し、アセチルコリンがなくても神経伝達のスイッチがオンになってしまうニセ神経伝達物質。[水野編2018:50]
神経伝達のスイッチをオンにするということ、つまり、神経を興奮させ続けることで虫を死に至らしめるというのが、ネオニコチノイド系農薬の作用機序だそうです。
「アセチルコリンがなくても神経伝達のスイッチがオンになってしまう」状態になっているということ、このことと発達障害の関連も疑われているそうです。「農薬の子どもへの影響」については、以下のように述べられています。
農薬が原因とされている子どもの病気や障害は多く、自閉症、ADHD、学習障害などの発達障害は、農薬使用量の増加に合わせるように米国や日本で増加しています。知能(IQ)低下、作業記憶の障害をふくめ、農薬が脳の大切な働き(高次機能)や発達を傷害し、さまざまな行動障害を起こすことが最近明らかになってきました。
(中略)
有機リンやネオニコチノイド農薬は微量でも、脳の情報を伝達するアセチルコリンの働きを狂わせます。アセチルコリンは、脳の発達のための遺伝子の働きを調節するという重要な役割を演じているため、脳の一部の神経回路が正常に発達せず、発達障害の一因になると考えられます。
(中略)
米国科学アカデミーは、これまでの研究により、子どもの発達障害や行動異常の約3分の1は、農薬やその他の化学物質の直接的影響、あるいは、それら暴露と遺伝子の相互作用が原因で起きると推定しています。[水野編2018:58]
影響を及ぼすのは発達障害だけではありません。ALSや重症筋無力症といった神経難病の発症にも関わっているようです。
どうして増えるの? ALS、重症筋無力症などの神経難病――海外では農薬などの有害物質に注目
日本ではあまり知られていませんが、海外では、農薬へのばく露がパーキンソン病の発症リスクを増加させることについて、十分な証拠が蓄積されています。
(中略)
ネオニコチノイド農薬は、もともと昆虫にも同じようにあるアセチルコリン受容体への結合を阻害するように開発されたものです。害虫の神経系を麻痺させることを目的として開発された神経毒性のある農薬が今日、見えないところで人間も攻撃しているのかもしれません。[水野編2018:68]
本書では、こうした農薬と疾病との関連を示す海外の研究がいくつも紹介されています。
緩和される日本の残留基準と、世界の動向
では、ネオニコチノイド系農薬はどの程度使用されているのでしょうか。
ミツバチの大量死を受け、EUでは2018年にネオニコチノイド農薬の屋外での使用が全面的に禁止されています。それに対して日本では、2015年にネオニコチノイド系農薬の残留基準が緩和されています。
残留基準の緩和の一例をあげておきます。ホウレンソウについて、以下のような記述がありました。
ホウレンソウはこれまでの3ppmから40ppmへ、カブの葉は0.02ppmから40ppmへと2000倍になりました。新しいホウレンソウの残留基準値、40ppmという値は、子どもが1.5株(約40g)食べただけでも、急性中毒リスクが発生する値であると指摘されているのです。[水野編2018:29]
ホウレンソウ1.5株というのは、十分、子どもでも食べられる分量ですよね。
次に、日本、米国、EUの残留農薬基準値を紹介しておきたいと思います。イチゴは、日本3ppm、アメリカ0.6ppm、EU0.05ppmとなっています。ブドウは同じく、5ppm、0.35ppm、0.5ppm、茶葉に至っては、日本30ppm、EU0.05ppmだそうです。日本の基準値が極めて高い状態にあることがおわかりいただけると思います。
結果、海外に輸出した日本の農作物が破棄されるという事態も生じています。
台湾で日本から輸入したイチゴなどの農作物が、同国の残留基準に違反しているとして2013年末3か月間に39件輸入差し止めとなったのです。その中で違反が最も多かったのがイチゴでした。日本で使用が許可されている農薬の数は、台湾よりはるかに多いだけでなく、残留基準も桁違いに高いのです。たとえばフロニカミドという農薬は、台湾の残留基準値0.02ppmに対して日本は2ppmと、日本の方が100倍も高く、たくさん農薬が入っていてもいいことになっています。[水野編2018:31]
台湾では食べられないような「危険」な農作物を、日本国内では販売している、ということになります。
毎日の食卓から見直す
海外では、「子どもの発達障害の症状が、生活の中の有害物質を減らしたり、添加物や農薬を減らすことによって改善したとする報告が増えてい」[水野編2018:70]るそうです。先日観た映画「いただきます みそをつくる子どもたち」でも、オーガニックな玄米食にした保育園に通うようになって、子どもたちが落ち着いてきたという話がありました。
毎日の食事から、できることをしていきたいと思います。
引用・参考文献
水野玲子編、NPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議(JEPA)監修、2018『知らずに食べていませんか? ネオニコチノイド』増補改訂版、高文研