教育文化経営学院

『食事でかかる新型栄養失調』

カロリーは足りてもミネラルが不足する? 『食事でかかる新型栄養失調』を読んで

『新型栄養失調』

カロリーは足りているのにタンパク質やミネラルといった栄養素が不足している栄養失調を「新型栄養失調」と言います。偏ったダイエットや食事から、新型栄養失調やその予備軍が増えていると指摘されています。

食事が偏ることで、たった一ヶ月で新型栄養失調になると本書では指摘されています。新型栄養失調になると、疲れやすい、風邪をひきやすい、肩が凝るといった体調不良が引き起こされます。

実測値が基準値を下回る現代の食品

本書では、栄養素の中でもミネラルに注目し、コンビニやファーストフード、宅配、外食等で販売されている食品のミネラルの実測値が掲載されています。第三者機関で計測されたものです。結果、多くの食品は、ミネラルが摂取の目安となる基準値を下回っていたそうです。

取り上げられている食品の中には、高齢者向けの宅配弁当も含まれています。こういったものは、一般的に、栄養に配慮していると思われていますよね。けれども、測定値は基準値を下回っていたそうです。

加工食品の原料の多くには、業務用食品が使われています。業務用食品では、茹でて冷凍するといった加工が施されています。この過程で、ミネラルが失われてしまうそうです。冷凍のドリップについて、以下のように記されています。

「冷凍するときに水が膨張して細胞膜が破れ、そのときに細胞の中にあったミネラルが溶け出る。これを「ドリップ」という。消費者がよく目にするのは、肉から出たドリップで、ここにミネラルがたくさん含まれている。」[小若・国光他2010:89]

「レトルト食品のミネラルがすべて極端に少ないのは、冷凍食品のドリップを洗い落しているためなのだ。」[小若・国光他2010:89]

油で揚げたものも同様だそうです。

「食材の中にあったミネラルをはじめとする栄養素は油に溶け出て、高純度の油が食材の中に入ってくる。つまり、水煮と同じことが起こっていて、「油煮」で食材中の栄養素を減らして食べているのが、てんぷらとフライなのである。」[小若・国光他2010:90]

食品成分表と実測値の大きなズレ

このように、実際の加工食品ではミネラルが少ない原料が使われています。けれども、食品成分表には、家庭で手作りした場合の栄養成分のデータが記載されています。そのため、食品成分表から計算した場合はミネラルが足りていたとしても、実測値が大きく下回ることになるそうです。

「加工食品の原料の大部分には、ミネラルの抜かれた業務用食品が使用されるようになっている。ところが「食品成分表」には、家庭で手作りした場合の栄養成分のデータが記載されているのである。」[小若・国光2010:92]

「同じ豚肉でも家庭での調理ならミネラルは比較的多く残存し、業務用の加工をしたものは四分の一程度に減っていたわけである。」[小若・国光2010:92] 

発達障害との関連と、重要な指摘 

ミネラル不足は、先に述べたような体調不良の他に、発達障害とも関わっているとの指摘もありました。本書では、6歳のときにアスペルガー症候群と診断されたお子さんのケースが紹介されています。 

「六歳のときにアスペルガー症候群と診断され、パニックや集団生活への不適応、ひどい偏食など、トラブルの絶えない日々を送っていたこうちゃん(今井光輔くん・仮名)。

二〇〇八年一〇月、小学二年生の秋に「無添加白だし」を使い始めると、直後から頻発していたパニックもおさまり、ひどかった偏食の改善、感情のコントロール、自信や意欲、気力の充実と、次々と変化がみられたのだ。」[小若・国光他2010:163] 

「ついに二〇一〇年九月、主治医の診断のもと、六歳から処方されていた精神安定剤(リスパダール)の服用も正式に終了した。」[小若・国光他2010:164]

「無添加白だし」というのは、煮干し等、ミネラルを含むものです。

このケースで、ミネラルが発達障害を改善したと断言はできないかもしれません。服用していた精神安定剤(リスパダール)の効果かもしれませんし(ただ、リスパダールの添付文書を見てみると、「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)」と書かれてはいるのですが)。その点では「エビデンスが示されている」とは言い切れないようにも思います。

しかし、食品成分表に示されているミネラルの数値と実際の食品に含まれているものとでは大きく値が異なるという点は、重要な指摘だと思います。

引用・参考文献

小若順一・国光美佳・食品と暮らしの安全基金、2010『食事でかかる新型栄養失調』三五館